動物看護師試験のための行動学「学習理論1 馴化 感作 脱感作 般化」
動物行動学 「学習理論1 馴化 感作 脱感作 般化」
動物が行動をする場合、それらは大きく2つに分けることができます。
一つは生得的行動で解説した、維持行動や社会行動などの動物が生まれ持った行動です。これらの行動は個体の経験による差があまり影響せず、同種動物間で比較してもその行動に変化は生じません。
もう一つは成長する過程で獲得される学習行動。
今回は学習行動について解説します。
学習行動ってなに?
学習行動とは個体の経験によって行動の頻度や強度などに大きな差が生まれる行動です。
例えば、社会化期に充分な経験を積んだイヌであれば男性に対して恐怖反応はあまり生じません。しかし、社会化期に男性に会う経験をしたことのないイヌであれば、男性を見た際に恐怖反応が生じるでしょう。
これらの差が生じる際に様々なルールが存在していることが分かっており、それらを体系的にまとめたものを学習理論と呼びます。
馴化
馴化とは簡単に言ってしえば刺激に慣れることです。
刺激を与え続けることにより最初は表出していた反応が徐々に減弱または消失することを馴化と呼びます。
ヒトであればライブ会場など大きな音がする場所に入った当初は五月蝿く感じたり、ビクッと肩をすくめてしまう反応が出ます。しかし、その環境にしばらく居続けるとそれらの反応が出なくなるのも馴化が働いているからです。
匂いに関しても馴化は起こります。
ペットショップや動物園に初めて行った時に気になっていた匂いが、しばらくその場に居続けたり、定期的に通うようになると気にならなくなるのも同じです。
イヌやネコなどでよくある馴化の例は新しく買ってきたペット用品に慣れることでしょうか。
最初は匂いを嗅いだり恐る恐る近づく反応をしていたとしても、しばらく用品を置き続けていたら警戒する反応は次第に弱くなりますね。
馴化は安全なものであるなら過度に反応する必要はないと学習することです。
しかし、一度馴化が起こったとしてもしばらくその刺激が与えられないことが続いた後に同じ刺激を提示すると元の反応が再び起こることが分かっています。これを自発的回復と言います。
上記で紹介した音や匂いに関する馴化も、期間が空いた後に訪れると再び肩をすくめたり、匂いが気になってしまうのがコレに当たります。
感作(鋭敏化)
感作とは馴化とは真逆で刺激に対して過剰に反応するようになることです。
例えばイヌネコの場合、雷に対して強い恐怖反応を示す経験をしたとします。その後遠くで雷の音がしただけでブルブル震えたり、落ち着かない様子で室内を歩き回る姿は容易に想像出来るかと思います。これが感作です。
感作が起こりやすい刺激の特徴として、雷や地震などの恐怖刺激や母子分離などの社会的ストレスであることが多いです。
脱感作
「感作」を「脱」すると書く脱感作は文字通り一度学習した反応が元に戻ることを意味します。
脱感作が起こる手順は馴化や感作と同様に該当する刺激を提示し続けると起こりますが、一般的に恐怖反応を起こす刺激(雷など)を与え続けても脱感作はほぼ起こりません。ほぼ100%悪化します。
脱感作を使う場合は行動修正法で紹介する「系統的脱感作」という手法が用いられます。
般化
般化とは馴化や感作が起こった刺激に対してそれに似た刺激にも同様に反応の増強や減弱や起きることを指します。
馴化であれば慣れた刺激以外にも慣れるようになる。
感作であれば怖くなった刺激以外にも怖がるようになる。
社会化期の動物やトレーニングを長年経験した動物であれば様々な刺激に対して般化しやすくなります。というような使い方をします。
以上が馴化、感作、脱感作、般化の解説になります。
動物のトレーニングに関わる人であれば日常的に使用する単語ですが、そうでない人にとってはとっつきにくいものが多いかと思いますので、学習理論の解説ではなるべく紹介例を多めにしたいと思います。
扱って欲しい内容などがあったらコメントなどで残してもらえると嬉しいです。
当面は統一機構に載っている試験範囲を優先的に扱う予定となっております。
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