動物看護師試験のための行動学「学習理論2 古典的条件づけ」

 

動物行動学 「学習理論2 古典的条件づけ」

前回は「馴化,感作,脱感作,般化」について解説しました。
これらは刺激に対する反応が増減したり、似た刺激に対しても同様の現象が起こることでした。

今回解説するのは「古典的条件づけ」についてです。
「レスポンデント条件づけ」とも呼ばれていますので、試験ではどちらの名称で出ても同じものだと判断してくださいね。


古典的条件づけとは

古典的条件づけは刺激と刺激の結びつきを学習すること、刺激と生得的な反応が結びつくことを指します。


ここでの刺激とは五感によって身体の外から入ってくる情報全てが含まれます。
なので、音や光(人の姿や物体を見るなど)、触られる、味、匂いなどの刺激が、他の刺激と結びついたり、全く反応とは関係のない刺激が生得的な反応(よだれを出す、ビックリして肩をすくめるなど)と結びつくことを古典的条件づけと言います。


古典的条件づけが成立する前



用語の解説をします。
まずは「古典的条件づけが成立する」のお話

反応と関係ない刺激とは「チャイムの音」や「人の言葉」など、本来動物の生得的な反応とは関係の無い刺激を指します。この刺激は中性刺激と呼ばれます
何にも関係ない刺激なので「中性」とイメージしてください。




動物に反応を与える刺激とは「食べ物を見せる」や「花火の音」など、動物の生得的な反応を引き起こす刺激を指します。この刺激は無条件刺激と呼ばれます。
条件づけされて「無い」刺激とイメージしてください。



生得的反応とは無条件反応によって引き起こされる「ヨダレを垂らす」、「ビックリする」などの反応を指します。この反応は無条件反応と呼ばれます。
条件づけされて「無い」反応とイメージしてください。






古典的条件づけが成立した後



続いて「古典的条件づけが成立した」の解説です。


古典的条件づけが成立した後は、反応と関係の無い刺激を提示した後に動物に反応を与える刺激を提示しなくても、生得的な反応が起こります。


この時、反応と関係の無い刺激条件刺激と呼びます。
また、現れる生得的な反応条件反応と呼びます。


刺激や反応は変わっていませんが、呼び名が変化しますのでご注意ください。


「なんでこんなややこしいことすんねん」と思いますよね。
これはそれぞれの刺激と反応が同じなので、「条件づけが成立する前後どちらのことを指しているか」を区別するために名称を変えています。



つまり、古典的条件づけとは

無条件反応を引き起こす無条件刺激を提示する前に中性刺激を提示することを繰り返すと、古典的条件づけが成立して条件刺激を提示しただけで条件反応が現れる」

と表現されます。


パブロフの犬

パブロフの犬というのは古典的条件づけの基盤を築いたロシアの科学者イワン・パブロフが行った実験のことです。
動物業界の人であれば聞いたことがある人は多いかと思います。ベルの音でヨダレが出るというあの話です。

このパブロフの犬の話を上で解説した用語を使って紹介します。



この実験では犬の口腔内に唾液が出たか調べる装置を取り付けた状態で行われました。




実験はまず最初に、犬にベルの音(中性刺激)を聞かせてもヨダレ(無条件反応)が出ないことを調べました。
実験に参加した犬にとって、ベルの音が中性刺激となっているか確認するためですね。


次に犬はしばらくの間、ご飯(無条件刺激)を出される前に中性刺激を提示される生活を続けました。




しばらくその生活が続いた後、ある時条件刺激を提示しただけで犬は条件反応が出るようになっていました。


途中から用語のみになりましたが、わかりましたか??

用語は突然出てくると身構えてしまうので、パブロフの犬の話を用語で理解できれば、問題文を読み解く際に頭の引き出しをひっくり返さなくて済みますね。


高次条件付け

高次条件づけは簡単に言うと「古典的条件づけが2回以上起こる」ことです。

既に成立している条件刺激と新たな中性刺激でも古典的条件づけが起こります。

身近な例としては散歩の準備で飼い主がコートを着ると興奮する犬が挙げられます。

最初は「飼い主がリードを持つ」という視覚刺激と「散歩に行く」という嬉しい・楽しい情動の間で古典的条件づけが成り立ちます。

そして、散歩に行く時に必ず飼い主がコートを着ていると、「リードを持つ」という条件刺激の前に「飼い主がコートを着る」という中性刺激が毎回提示されている状態になります。

その結果、「コートを着る」と「リードを持つ」の間で新たに古典的条件づけが起こり、コートを着ただけで犬は嬉しくなってしまいます。


拮抗条件づけ

拮抗条件づけは厳密には「別の条件反応に変更する」ですが、試験的には「嫌い」を「好き」に変えると理解すれば大丈夫です。


よくある例としては「爪切りを嫌がる動物に対して、爪切りを見せた後にオヤツを与える」です。

爪切りを失敗して痛い思いをした動物を爪切りと痛みの間で古典的条件づけが起こります。

それを克服するために、爪切りを見せた後にオヤツを与えることを繰り返します。そうすると爪切りとオヤツの間で新たに古典的条件づけが起こり、爪切りを見せて嫌がることが無くなるというものです。



古典的条件づけが成立しにくい事例

古典的条件づけを成立させようとする際に、なかなか成立しないことがあります。試験ではあまり出題されない範囲ですが、動物のトレーニングをする際は気をつけなければいけません。

刺激の阻止

既に古典的条件づけが成立している条件刺激がある状態で、他の中性刺激を提示して同じ無条件刺激と古典的条件づけを成立させようとしても成立しにくくなります。

既に学習した条件刺激の方が目立ってしまい、提示された中性刺激が目立たなくなってしまうというイメージです。





刺激の隠蔽

古典的条件づけを成立させる際に、同時に2つ以上の中性刺激を提示すると動物にとって目立つ刺激が優先的に無条件刺激と結びついてしまうことです。

よくある例として、褒め言葉と食べ物を古典的条件づけさせようとする際に動物が言葉ではなく、食べ物を準備する手の動きに注意が向いてしまうことです。






以上、古典的条件づけの解説でした。


オペラント条件づけと混同してしまう方がかなり多いため、古典的条件づけは刺激同士の結びつきと理解しておきましょう。

扱って欲しい内容などがあったらコメントなどで残してもらえると嬉しいです。

当面は統一機構に載っている試験範囲を優先的に扱う予定となっております。






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