動物看護師試験のための行動学「学習理論3 オペラント条件づけ、強化スケジュール、消去」
動物行動学 「学習理論3 オペラント条件づけ、強化スケジュール、消去」
前回は「古典的条件づけ」について解説しました。
オペラント条件づけとは
オペラント条件づけは行動直後に起こった出来事により、行動が現れる頻度が増減することです。
動物は自分の行動の結果、どのようなことが起こったかによってその行動を頻繁にした方がいいのか、やらない方がいいのかを学習します。
オペラント条件づけには「正・負」と「強化・弱化」のそれぞれを組み合わせた用語があります。
「正」や「強化」と聞くとポジティブなイメージ、「負」や「弱化」はネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、全く関係ありません。
正とは行動した後に刺激が現れていることを表します。
負とは行動した後に刺激が無くなっていることを表します。
強化とは行動が増えていることを表します。
弱化とは行動が減っていることを表します。
文字のイメージに引っ張られないようにしましょう。
ちなみに、強化や弱化の要因のことを強化子・弱化子と呼びます。
強化子・弱化子にはオヤツや褒め言葉、体罰、大きな音など様々な刺激が当てはまります。
正の強化
正の強化は行動後に刺激が出てきて、行動が増えていることを表します。
具体的な例としては、
・座ったららオヤツがもらえたので、よく座るようになった。
・吠えたら飼い主がこちらを見たので、よく吠えるようになった。
どちらも動物の行動前に無かった刺激が、行動後に現れています。その結果行動が増えているため、正の強化になります。
強化子はそれぞれ「オヤツ」、「飼い主の視線」になります。
正の弱化
正の弱化は行動後に刺激が出てきて、行動が減っていることを表します。
・吠えたら大きな音が鳴ったので、吠えなくなった
・飼い主の近くに来たら怒られたので、近くに来なくなった。
動物の行動前に無かった刺激が現れて、行動が減っているためこれらは正の弱化となります。
弱化子はそれぞれ「大きな音」、「怒られる(怒鳴り声)」になります。
負の強化
負の強化は行動後に刺激が無くなり、行動が増えることを表します。
・吠えたら苦手な人がいなくなったので、よく吠えるようになった。
・抱っこが嫌で暴れたら逃げることが出来たので、よく暴れるようになった。
動物の行動前にあった刺激が無くなり、行動が増えているためこれらは負の強化となります。
強化子はそれぞれ「苦手な人がいなくなる」、「逃げられる」になります。
負の弱化
負の弱化は行動後に刺激が無くなり、行動が減ることを表します。
・飼い主の手に甘噛みをしたら遊んでくれなくなったので、甘噛みをしなくなった。
・飼い主に見て欲しくて吠えたら飼い主がいなくなったので、吠えなくなった。
動物の行動前にあった刺激が無くなり、行動が減っているためこれらは負の弱化になります。
弱化子はそれぞれ「遊び」、「飼い主の存在」になります。
試験でこれらの問題が出たら注目するポイントはたった2つ
・行動の前後で刺激が出現しているのか、無くなっているのか
・行動が増えているのか、減っているのか
ここさえ見抜ければ100%解けます。
強化スケジュール
強化スケジュールとは「強化子をどのようなタイミングで提示するか」というものです。
おそらく試験では「(具体的な手法)。この方法は強化スケジュールのうちどれか」みたいな形で出題されるかと思います。
連続強化
連続強化とは動物が行動した際に毎回強化子を提示することです。
座ることを教える際に座る度にオヤツを与える手法です。
連続強化の特徴はオペラントや古典的条件づけの成立が早いことです。
座ると毎回オヤツが出てくる、褒められる度にオヤツがもらえるといった経験を積むと、動物はその繋がりを早く学習します。
その反面、強化子が提示されないことが続くとこれらの繋がりはすぐに「もうもらえない」と再学習してしまいます。後述する消去が起こりやすいのも特徴です。
部分強化
部分強化とは強化子の提示タイミングが連続ではない方法です。
座ることを教える際に座ってもオヤツが出ないことがあるというものです。
部分強化の特徴は連続強化に比べるとオペラントや古典的条件づけの成立が遅いことです。
座ってもオヤツが出ないことがあるため、動物は座ればオヤツがもらえるとその繋がりに気付きにくくなってしまいます。
しかし、連続強化と違って一度その繋がりを覚えてしまえば、座った後にオヤツが出ないことがあっても既に出ないことを経験しているため、消去が起こりにくいという特徴があります。
部分強化には2種類方法があります。
固定強化
固定強化は決まった間隔で強化子を提示する方法です。
例えば座ることが3回出来たら1つオヤツを与える、待てが5秒出来たら1つオヤツを与えるなどが固定強化になります。
この方法を使い続けていると、動物が「あ、◯回に1つオヤツがもらえるんだな」と理解し始めます。気付いた動物は4回目は確実にオヤツがもらえないと分かってしまうため、行動を止めてしまうことが起こります。これを反応休止と呼びます。
変動強化
消去
消去とは一度学習した条件づけの繋がりを「そのルールはもう無くなった」と再学習することです。
消去の手法は古典的条件づけであれば条件刺激の後に無条件刺激を、オペラント条件づけでは強化子や弱化子を提示しないことを続けます。そうすることにより条件刺激は中性刺激に、増減していた行動は元の頻度に戻ります。
消去バースト
消去を試みている時に、条件づけされた反応が一時的に高まることを消去バーストと呼びます。
これは私たち人間にもよく起こっています。
例えば、自動販売機でジュースを買う際に(お金を投入して)ボタンを押せば欲しいジュースが手に入りますよね。行動(ボタンを押す)の後に報酬(ジュース)が出てくるケースとして想像してみましょう。
ある日、あなたがボタンを押してもジュースが出てきませんでした。
すぐに諦めますか(消去が起こるか)?
大抵の人はもう一度ボタンを押してみると思います。
それでも出てこなかったら?
まだ諦めませんよね?
多くの人はボタンを連打したり、強く押したり、もしかしたら自販機を殴るかもしれません。
そこまでして出てこなかったら、諦めて返金レバーをひねる人が大半です。(消去の成立)
この例のボタンを連打、強く押す、自販機を殴るというのが消去バーストに当たります。
動物も同じような気持ちでいるのかもしれません。
以上、オペラント条件づけ、強化スケジュール、消去の解説でした。
繰り返しになりますが、オペラント条件づけと古典的条件づけは混同しないよう気をつけましょう。
オペラント条件づけは行動
古典的条件づけは刺激
扱って欲しい内容などがあったらコメントなどで残してもらえると嬉しいです。
当面は統一機構に載っている試験範囲を優先的に扱う予定となっております。
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