動物看護師試験のための行動学「行動の進化・適応・家畜化」
動物行動学②行動の進化・適応・家畜化
進化の話題で動物学者の鉄板ネタとして使われているのがポ◯モンです。
◯ケモンで進化といえば手持ちのピ◯チュウがライチ◯ウに進化した!というのがよくある話ですが、学者の人たちからすると「これは進化ではない!」と言われます。
進化とは
学者の人たちが言う進化とは、生物の形質が世代を重ねて変化していくことを指しています。
なので、ポケモンの話をこれに重ねると、「3万年前にここの地域にはピチューという生物がいて、その後8千年前頃にはピチューはピカチュウとなり、現在はライチュウとして現存している」という具合になります。
手持ちのピカチュウがライチュウに姿形が変わるのは「変態」と呼ばれるものになります。イモムシが蝶に変化するのと同じですね。
※最近ポケモン公式から「ポケモンの世界の進化と現実世界の進化は別のもの」との声明があったそうな無かったそうな
この進化というのも一般的に知られているものと学術的には少し違っており、一般的によく使われている表現として「キリンは高い所にある食べ物を食べるために、首を長く進化させました」というものがあります。
しかし、実際は自分の意思でキリンは首を伸ばしたのではなく、たまたま他のキリンより首が少しだけ長いキリンが生き残り、その遺伝子を受け継いだ子どもの中でもさらに少しだけ首の長いキリンが、他の個体より多くのメリット(食べ物や危険回避)を受けて生存や繁殖に有利になる…というのを繰り返した結果、キリンの首がどんどん伸びていった。というのが現在有力な説となっています。
自然選択説とは
このように「周りの環境に、より適応したものが生き残り、適応できないものは淘汰される」という説を「自然選択説」と言います。
このように様々な形質を進化させてきた動物たちですが、意外な動物たちの祖先が共通だったということもあります。
例えばコンパニオン・アニマルとして有名なイヌとネコは、共通の祖先から分かれた動物になります。
イヌネコの進化
犬猫の祖先はミアキスという動物で、
犬はミアキス→トマークタス→ハイイロオオカミ→イエイヌと進化しました。
猫はミアキス→プロアイルルス→リビアヤマネコ→イエネコと進化しました。
犬はミアキス→トマークタス→ハイイロオオカミ→イエイヌと進化しました。
猫はミアキス→プロアイルルス→リビアヤマネコ→イエネコと進化しました。
トマークタスになったミアキスは元々住んでいた森から草原へ移住し、プロアイルルスになったミアキスは森林に留まった結果、それぞれの環境に適応した行動や形質になっていきました。
それぞれの環境に適応して進化を重ね、我々と一緒に暮らしている動物たちですが、すんなり人と一緒に暮らし始めたわけではありません。
現在有力とされている説を例に、イヌがヒトが一緒に暮らし始めたきっかけを紹介します。
1万5千年前、ある所にイヌの祖先であるオオカミがいました。ある日、オオカミが暮らしている近くにヒトが住み始め、ヒトは集落の近くにゴミ捨て場(貝塚のようなもの)を作って生活をしていました。
最初のうちはヒトもオオカミも互いに自分の身に危険が無いのであれば干渉しませんでしたが、群れの中でも人に対して警戒心の薄いオオカミは「危険で成功するかも分からない狩りに行くより、最近近くに引っ越してきた毛の薄いサル(ヒト)が捨てているゴミを食べた方が楽なのでは??」と思い、徐々にヒトの集落に近づくようになりました。
オオカミが集落に近づくことで、はじめは警戒したヒトですが、自分達に危害を与えずゴミを処理してくれるオオカミを次第に受け入れるようになりました。
このようなことが長い年月を経るうちに、オオカミはヒトの近くで暮らすオオカミ(イヌの祖先)と、ヒトの近くで暮らさなかったオオカミ(オオカミの祖先)に分かれました。
さらに長い年月が経つと、ヒトの近くで暮らすようになったオオカミはヒトと一緒に狩りに行くようになりました。
オオカミと一緒に狩りに行くことで、ヒトは以前より多くの獲物を得ることが出来るようになりましたが、新たな問題も発生するようになりました。
集落の近くで暮らすオオカミの中には、ヒトに対して攻撃的な性格を持つ個体も生まれることがあります。そのようなヒトにとって危険なオオカミとは一緒に暮らすことが出来ないため、ヒトはヒトにとって有益な形質を持つオオカミを優遇するようになりました。
優遇されたオオカミは死の危険から遠ざけられ、繁殖の機会も多く巡ってきます。一方、優遇されなかったヒトにとって危険なオオカミは優遇されたオオカミに比べると繁殖の機会が減ってしまいます。
そうすると、次第にヒトと一緒に暮らしているオオカミは、ヒトにとって有益な形質を持った個体が多く存在するようになりました。
家畜化とは
ヒトが特定の目的に合わせて動物を飼育し、特定の形質を残すよう繁殖させることを家畜化と言います。
現在では犬や猫は様々な品種があります。
品種を作成する際もこの家畜化のプロセスを経ています。
実験としてはロシアのギンギツネの実験が有名です。
ギンギツネの実験において、特定の形質(この実験ではヒトへの慣れやすさ)を残すよう交配を続けると、世代を重ねるに連れて姿形も変化していくことが分かりました。
共通する変化として子どもの形質のまま大人になるという変化が、人慣れしやすいギンギツネに見られました。これはネオテニー(幼形成熟)と名付けられた遺伝的変化になります。
ネオテニーとは
ネオテニーとは、家畜化をしていくにつれて大人になっても子どもの形質が残ったままになること
このネオテニーはイヌにも起こっており、祖先のオオカミと比べるとイヌの頭蓋骨は丸みを帯びてマズルも短くなっています。
行動面においても、イヌは大人になっても遊ぶ行動をしますが、オオカミの大人は遊ぶ行動はほとんどしません。大半は子どもの個体が遊ぶ行動をします。
進化・適応・家畜化と歴史の話なのでイメージしにくいかと思いますが、お話として頭の片隅に入ってもらいやすいかなと思います。
扱って欲しい内容などがあったらコメントなどで残してもらえると嬉しいです。
当面は統一機構に載っている試験範囲を優先的に扱う予定となっております。
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